地球温暖化に代表される気候変動問題は、地球規模で長期的に取り組むべき重要課題です。温室効果ガスである二酸化炭素の大気中の濃度は、産業革命前280ppmだったものが、わずか数百年後の現在、380ppmまでに上昇、このままでは2100年においては500~1000ppm程度まで上昇すると予測されています。大気中の二酸化炭素濃度を安定化させるためには、陸域および海洋における炭素吸収量(約30億炭素トン)と炭素排出量(約63億炭素トン)のバランスをとることが必要であると言われています。
温室効果ガス濃度上昇による各種の環境異常は、すでにその兆しが現出し始めており、地球が数億年の時をかけて地中に炭素を固定化する事によって保たれてきた現在までの環境が、ここ数百年の急激な化石資源の消費によって、将来の地球環境悪化の危険性をはっきりと予知させるまでに至っています。
2002年6月の「京都議定書」日本政府批准は、地球温暖化に対する具体的施策として日本政府が表した第一歩であり、その後、世界的にも大きな影響を及ぼしました。2002年12月には政策を具体的に推進する施策として、「バイオテクノロジー戦略大綱」「バイオマスニッポン総合戦略」が、日本政府の2大戦略として発表されています。
この2つの戦略が目指すのは、地球温暖化とそれに伴って現出している多くの環境異常を抑制し、併せて枯渇の危険性が叫ばれる化石資源の使用縮減を進めるため、近年大きく進歩したバイオ技術を有効に活用し、再生可能資源である「バイオマス」の活用を進めようという方針です。
なかでも、バイオケミストリーの技術的進歩の積極的な活用といった観点からも意義の大きい、再生可能資源からつくられる「バイオマスプラスチック」の利用の拡大は、重要な課題として提言されています。 「バイオテクノロジー戦略大綱」によれば、2010年代の後半には、バイオマスプラスチックの利用の飛躍的拡大が大きな政策目標となっています。枯渇の可能性が叫ばれている化石資源からだけしか作れなかったプラスチックを、植物など、長くかかったとしても数十年の期間内で再生が可能なバイオマス資源によって生産できれば、化石資源の消費の削減と、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑制することが可能となります。バイオマスプラスチックは、この新しいコンセプトを代表する資材なのです。
日本バイオプラスチック協会(JBPA)では、バイオマスプラスチックを
「原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、
化学的又は生物学的に合成することにより得られる高分子材料。」
と定めています。(化学的に未修飾な天然有機高分子材料は除く)
バイオマスプラスチックは原料にバイオマスを利用することに特長があります。原料の種類等は多岐にわたりますが、分類としては、バイオマスを全面的に使うか部分的に使うかによって分けられます。
バイオマスから作られた原料だけを原料にしたプラスチックでポリ乳酸・変性澱粉などが含まれます。
現在は石油原料によって製造されているポリブチレンサクシネート系(PBS、PBSA)、も、原料のコハク酸と1,4ブタンジオールの両方がバイオマス原料への切り替えが実現すると、このタイプに分類されることになります。
ポリプロピレンテレフタレート(PPT)の、片方の原料であるプロピレングリコールを醗酵法で作った製品がすでに販売されています。またポリ乳酸の共重合物、酢酸セルロース系もこの分類に属します。
現在、石油原料によって製造されているポリブチレンサクシネート系(PBS、PBSA)、の原料のコハク酸、またポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の原料の1,4ブタンジオールをバイオマス原料に切り替える計画が進められており、これが実現すると、この「部分的バイオマス原料プラスチック」タイプに分類されます。
バイオマスプラスチック
再生可能なバイオマス資源を原料に、化学的または生物学的に合成することで得られるプラスチック。それを焼却処分した場合でも、バイオマスのもつカーボンニュートラル性から、大気中のCO2の濃度を上昇させないという特徴がある。これにより、地球温暖化の防止や化石資源への依存度低減にも貢献することが期待される。
主 要 用 途 |
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食品容器包装・レジ袋・こみ収集袋 |
非食品容器包装 |
衣料繊維 |
電気・情報機器 |
OA機器 |
自動車 |